血も 身体を構成する情報も
すべて すべてが愛おしい
−戯事の戯れのその裏は−
「マサムネ」
いつものように、名を呼ぶ。
部屋には二人きり。
びくり、と恐れるように震える身体。
それを見て、笑みが浮かぶ。
「ひどいな、マサムネ。
俺だって傷つくんだぜ?」
目を眇めて小首を傾げてみせる。
「…嘘、だろ。それ。
お前が傷つくことなんてねえことは俺様でも知ってる」
「ふうん…なら、俺が怖いのか?」
そう問えば、またマサムネの肩が震える。
ああ、そんなマサムネがこの上なく愛しい。
「…っ寄るな……!」
知らない内に俺は前に進んでいたらしい。
マサムネから制止がかかる。
けれどそんなもの、知ったことじゃない。
「どうして?」
答えは分かりきってる。昔から何度も行っている問答。
けれど、今日もまた問う。
「俺様は…お前の気持ちを受け入れられねえ。
双子である俺様を恋愛感情で見てるっていうお前を…。
…理解できねぇんだよ、カゲムネ」
「ふうん。…でもな、マサムネ」
にぃ、と自分の唇が弧を描くのがわかる。
「俺は、世界中の誰よりもお前が愛しいよ。
その闇を抱いたような黒髪も。
全てを射抜くような鋭い目も。
今は何も映せなくなったその眼窩も。
俺を拒絶する言葉を吐くその唇も、声も。
多くの武器を扱うその手も、腕も。
地を駆けるその脚も。
細いように見えるのに、しっかりとしたその体躯も…」
マサムネの顔が恐怖だろうか、負の感情に支配されるように強張っていく。
けれど自分が表情を変えているという事実に、心は躍る。
独白は止まらない。
「俺と同じもので出来ているはずなのに…。
どうしようもなく、お前が愛おしいよ、マサムネ。
お前に触れたくて仕方がない。
撫で、口づけ、舐め、抱きしめ、食み、狂わせ…。
俺がいなければ狂い壊れるくらいに、お前に俺を刻みこみ…」
「…もう止めやがれっ…!!」
マサムネの手には銃。
その目に宿る光は、本気の証。
けれど、俺はそれを鈍らせる言葉を知っている。
「俺を撃つか? …兄上」
その一言でマサムネの目に宿る決意が少し揺らぐ。
ああ、やはり優しくて甘い。
だからこそ愛しい。
血も 身体を構成する情報も
すべて すべてが愛おしい
だからはやく堕ちてきてくれよ
俺が君を壊す その前に
<あとがき>
頭に浮かんで萌えたからついやってしまったカゲムネ(双子の弟な白ムネ)→マサムネ。
なんていうか俺得にしかならんよね!(←
この二人は話をみても分かるように、カゲムネの盛大な片思いで、マサムネは受け入れる気がない。
マサムネは双子だからこそ受け入れられなくて、けど兄弟として、家族愛的にはカゲムネを好いていて。
カゲムネは迫る中で、弟としての立場を利用してマサムネを惑わす。
カゲムネがそんな外道だと本当に俺得です(←
マサムネが受け入れられない理由に関する話も書きたいけど、文章であらわすのが難しいなぁ…。