今日は一年の中で 最も緑が輝く日


 −プレゼント−


今日もいつものように世界をうろつく。
ポップンパーティーに参加した事ある奴や、これから参加するであろう奴らと言葉を交わして。


街を外れて荒野と森の境を進めば、前から一人の青年と一羽が進み来る。
「あ、神様。こんにちは」
「ああ、久しぶりだなキト」
17回目のパーティーの参加者であるキトは俺に笑いかける。
「珍しいですね、神様がこの辺りを歩いているのは」
そのキトの言葉に同意するように、コンドルの頭が縦に揺れる。
「まあ、俺神様だし。
 人が多いから街中にあらわれる事は多いが、他の場所にだって行くさ。
 人も動物も、この世界に生きるものは全て俺の子どもたちなんだから」
「じゃあ、今日植物たちが元気そうなのは神様のおかげなんですね」

キトの言った言葉に心当たりがなくて、眉間に皺が寄る。
そんな俺の様子を見たキトが言葉を紡ぐ。
「えーっと。今日の朝、森の中を歩いてたらそこに住んでる人がおすそ分けに木の実をくれて。
 その人と一緒にそれを食べたんですけど、それがすっごく美味しくて。
 この土地のものはこんなに美味しいんだ、って呟いたらその人が言ったんです。
 『いつもと違う。今日のものはいきいきしてる』って。
 その言葉を聞いてから、ここに来るまでにいつもよりもっと注意して歩いてたら、木の実をくれた人の言うとおりだったんです」

そこまで淀み無く話したキトは嬉しそうに笑んで、更に言葉を紡ぐ。

「今日の花や木々は、いつもよりずっと元気で、自ら光ってるみたいだったんです。
 故郷の景色を思い出すくらいに、とても綺麗で。
 だから神様が今、この世界に生きるものは全て自分の子どもだ、って言ったのを聞いて、思ったんです。
 神様の力を受けているから、今日の木々たちはこんなに綺麗なのかな、って」
話し終えた後、勘違いかもしれないけど、と呟いたキトに答える。

「その推察は半分正解で、半分は不正解だ」
「半分?」
俺の言葉に目を丸くしたキトに俺は言う。

「確かに今日の『緑』たちは、まあ厳密に言ったらちょっと違うけどな、神の力を受けてる。
 だから半分正解。
 でもその神は俺じゃねえんだ。だから半分は不正解だ。
 キト、お前も知ってるだろう?
 緑に、木々や花々を咲かす神のことを」
そう言って口の端を上げてキトを見やれば、どうやらキトは俺が指した者に気づいたらしく頷いた。
そして疑問に行き当たったらしく、首を傾げる。
「でもどうして昨日まではこうじゃなかったんですか?
 彼の神様ならばいつでも緑化を行っているはずなのに」
「今日はあいつにとって特別な日だからな」
「特別な日、ですか?」
「ああ、だからあいつの存在をいつも以上に思ってくれれば俺としては嬉しい」
そう言うと、キトが頷き、まっすぐに俺を見た。
「もちろんですよ。私は中々彼の神様に会えないけれど…いつだって信じていますから」





キトとコンドルと別れて道を進めば、周りにある木々や花々の息吹―生命力が高まっていくのに気付く。
その感覚からあいつが俺の進む方向にいる事を確認―もちろん最初からそっちにいる事は分かってはいる―する。

神々はそれぞれ力を、象徴を持って生まれ来る。
まあ、俺の場合は世界の全ての内包したものだから、特定の象徴は持っていないオールラウンダーな奴だけどな。
そして神々は自分の象徴と同じものに属するものたちを支配下に置く。
支配下っってもそれは一方通行の関係じゃねえし、庇護する側とされる側くらいなもんだ。

神に庇護される側―その神の眷属たちは己の神の事を最もよく知っている。
だからあいつの眷属である木々や花々は今日、己の力を高めたんだ。

己らを常に慈しむ神の生まれた刻を祝う為に、己らの神に喜びが届くように。


いつもならば神の力を使ってとんでいくが、今日はひたすら歩く。
そうしてあいつの視界に見える範囲にいない眷属たちの想いを少しずつ受け取って、あいつに渡そうと思う。

緑化に舞う、己の眷属全てに愛されるあの細身の神に。





 <あとがき>
イマ様お誕生日おめでとうございますーっ!
「あー、今日イマ様お誕生日だ」って思ってたら降ってきたので速攻で仕上げる。
計画性がないのはいつもの事。

そして主役のはずのイマ様が出てきてないけど、お誕生日おめでとう小説だと言い張る(←
私の中のイマ様像が固まってないのに、細かい描写するのも微妙、と思ったので、
イマ様は自分の眷属から好かれてるんだよ、イマ様の生まれた事を祝うものはたくさんいるんだよ!
という事に重点を置いてみたり。

ぎりぎりでも祝う気持ちには変わりないのよ。イマ様お誕生日おめでとーう!